歴代最速の@ダーツ

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【ダーツ】イップス理論が書かれるまで ~たーなーさんとのイップス議論~

こんにちは、きしです。
イップスの分類をしている方とお話をする機会に恵まれ、イップスの分類上とても有意義なやり取りだったため整理して記載します。

 

イップス理論が書かれた過程のお話です。興味のある方向けですが、本作の補完要素もあるので読んでいただければ幸いです。

 

特に後半の《失認》に関しては前回説明しきれなかったと思うのでこちらに詳しく取り上げておきます。
イップス理論を書き上げる前の段階なので、現在の記述を異なる点があるかもしれませんが、そういう場合は現在の記述を優先してください。

 

今回、イップス経験談だけでなくイップスの理論のお話まで協力して頂いた、たーなーさんにお礼申し上げます。


【たーなーさんとは?】

たーなーさんは、元JAPANプロの方です。私との接点は、私がイップスの経験者の方に話を聞きたいと呼びかけた際にたーなーさんから声をかけていただきました。

 

【本題】


まず、たーなーさんのイップス理論の簡易的なまとめがこれになります

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たーなーさんはイップスを3つに分類していることが分かります。

 

一方で、『当時の』私の分類がこちらになります。

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ある程度似ていることが分かります。
なので、両者の差に注目した議論が展開されました。

 

1つ目:イップス1の分類について。

まず、私はたーなーさんの分類1の「理想のフォームが自分の中にあって、それが自分の身体で体現することが不可能な場合に起こるもの」という表現が的を射ていると思い、自分の理論に輸入しようと思いました。

 

当時の私の分類は、ダーツ界隈でよく指摘されていた「フォームのズレが顕著で身体的な怪我を誘発する可能性があるもの」という側面が強かったため、怪我の発生に関わらない根本的な原因があると思いいたりました。

 

そこで、


きし「1は、僕の持論に加えたいです。 不可能なムーブをしようとして、結果的に怪我を起こすなども考えられる とした方が良いですね。 あと、無理なフォーム 怪我 痛みが生じる 痛みを恐れるあまり、投げようとすると腕がビクッとして投げられない、という症例は数件ありました」

 

たーなーさんの理論を主軸に、怪我の可能性もある場合があると示し、症例を参考例に出してみました。

 

たーなーさん「痛みを恐れる、は私理論だと2に含まれるかと思いますね 痛みがまだ生じていないのに精神が先に参っている状態ですから....」

意外な考えでした。まず私の分類について具体的な事例を出して補強するとともに反論を試みました。(反論に入るのが浅はかだったと今では思います。)

 
 
2つ目:イップス2について に移行していきます

 

きし「2はプロゴルファーによくあるように、緊張・失敗経験・トラウマが原因で脳に器質的変化がおきるか、心理的ブレーキが働いて脳から身体への伝達が阻害されること としているので、怪我を恐れて…というのは別の機序だと思います。 ただ、身近の人が怪我をして苦しむのを見て…だと2ですね」

 

怪我は身体的なものだから別機序。ただし、他人が怪我をしたのを見て恐ろしくなったという場合は精神的なものである、というシンプルな考えです。

 

たーなーさん「2に関しては訂正しますね。 精神的なもの全般を指します。 入らない恐怖感、入れたい気持ちが先行しすぎて入らないことを恐れること、怪我で痛むかもしれない恐怖感、など身体的な問題以外を全て総括して"精神的なものによるイップス"とします。」

 

たーなーさんの意見を聞いて納得しました。たしかに、実際に怪我が発生していない段階での分類は身体的機序ではないと思い直しました。

また、1→2のようにイップスの原因が移行したり併発しているという可能性として捉えるという視点を得たのもこの瞬間です。

そして、ここでもたーなーさんの分類を自己理論に輸入しました。

 

つづいて一番の議題になった、私のイップス3についてです。

 

3つ目:私のイップス3 について

きし「僕のイップス論3。ゲシュタルト崩壊のように、脳が投げる動作を失認してしまうのはどうでしょうか?」

 

たーなーさん「3に関してはどういう意味なのでしょう? 投げ方を忘れる、ということなんでしょうか?」

 

きし「3は、忘れるというより認識できない です。感覚派の方に多く、グリップやフォームの何かを気にしてしまい、全体としての投げる運動ができなくなる。他のイップスと異なるのは、違和感があるけど投げることはできる点です。ただし、ユーミングが極端に長くなった、GMで制限時間を超過して1本も投げられないなどの症状がでるみたいです。ダーツのように巧緻行動を反復するので、動作の1部に気がかかるとそのまま反復し全体の滑らかな動作がわからなくなる。該当する人に、ゲシュタルト崩壊というと納得されます。ジストニアに機序が似ていますが、ジストニアは異常な運動パターンの獲得であり、こちらは運動パターンの失認と考えています。改善策も反対であり、投げるイメージを組み上げる、違和感があっても早いテンポでリリースを繰り返す、理論的にフォームを構築することで改善されています。伸び盛りのAフラ前後に多く、症例の10%~20%くらいだとおもいます。 まだ統計ができていないので正確にいえませんが」

 

大まかな説明です。
・投げ方の回路が失われたわけではなく、隠れてしまった。
・ある程度の症例が該当するので存在すると思う。
最終的な統計では、13.5%でした。

 

たーなーさん「グリップやフォームが気になって、という人は多くいますが、私が見てきた人たちの大部分は根本的な問題が別の箇所にありました。 例えば、知らず知らずのうちに肩に力が入ってしまっていたり、下半身のバネがうまく使えていなかったりです。 それはイップスというよりも正しい体の使い方を忘れてしまっている状態です。 私はそれを自分の理論の1に分類しています。」

 

たーなーさん「私の理論の1に共通することは、正しい投げ方・身体の使い方を教えてあげることが改善策になることです。 これができればテンポも良くなり感覚的に投げ方を修正することもできます。 Aフラ前後になると昔ながらのトッププロに話を聞きに行って成長が止まるのもこれが原因と考えています。」

 

たーなーさんの考えですね。私もさらに考えを伝えました。

 

きし「機序の順序の問題だと思います。 先に失認が起きると、1連の滑らかな動きができず、その結果肩に力が入ったり体幹がぶれていたりします。 その場合、肩の力を抜けと言っても改善するわけではありません。 この場合の改善策は、元のイメージを取り戻す練習を行うか 別のフォームとして、正しい投げ方を組み上げ認識する方法です。 後者はたーなーさんの改善策と被りますし汎用性も高いと思います。」

 

続けて改善策に言及。

 

きし「問題正しいフォームが十人十色 千差万別であり、他者が教えることが難しい点であると思います。 誤解がないように補足すると、他者が教えて100%成功するとは言えないという意味です。 他者からフォームを教わり、成功するパターンは今のところ全て師匠と言える存在がいた場合でした。これからそれ以外の場合もでてくるかもしれないですが、長年自分を見てくれている人でないと難しいことは明白かとおもいます。なので、元のフォームを取り戻すことも大切な解決法かとおもいます 正しいフォームも、作り方やポイントを伝え本人主体で組み上げる方が成功することが多いようです」

 

きし「このように、脳の仕組み 改善策の両面から3のゲシュタルト崩壊的な脳の失認によるイップスを分類しました。 あくまで現時点、私の個別的な判断なので正しいとも間違っているとも自分ではわかりません。」

 

たーなーさん「なるほど、失認が先に起こるということですね。 たしかに私も過去に経験がある気がします。 当時の私の場合ですが、今考えれば身体の別の部分がスローの精度を変化した結果そういった失認が起こっていたように思います。その変化した部分を元に戻すことを改善策と仰っているのですよね?」

 

ここで、私も考えを整理しつつ細かく書くことになりました。

 

きし「細かくいいますと ダーツは多くの関節 筋肉を連動させた非常に巧緻な動作です。 その1パーツを切り取って意識しながら反復するうちに、投げている事への意識が強まり、投げる行為そのものが何なのかわからなくなります。 なぜかと言うと、複雑すぎる身体の制御は大まかな筋肉は随意性ですがそのほかの筋肉はその補佐筋で潜在意識で動いています。 関節の角度、筋肉の緊張も潜在意識です。 ここに顕在意識が混入することが問題なのです なので、改善策で変わった部分戻すというのはあまり関係なかったりします。 その部分が変わっていても、いなくても 潜在意識と顕在意識のバランスを取り戻すことが肝心です。そこで、全体的な投げるイメージを形成し、違和感があってもテンポよく投げることで感覚を取り戻せるのです。注意として、フォームに無理があり身体面で負荷がかかる時は適用されないです。 そこは本人が気がつくレベルなので、注意にとどめる程度です」

 

齟齬の内容に何を改善するべきなのか説明することで、他のイップスとの差異を明確にしようと思ったからです。

 

たーなーさん「理解できました。 根本的な疑問になってしまいますが、それはイップスに含まれるんでしょうか? 私の中できしさんの3はイップスなのか、"意識のしすぎ"なだけなのか分類ができません.... 確かにダーツにおいて3のような問題が起きることは間違いないと思います。 が、イップスという言葉の乱用がよく見られる気もしていて、イップスでない人がイップスだと言われて本当にそうなってしまうこともあると思います。」

 

さて、もっとも来るべき質問がきました。
《失認》のイップスが、他の人からイップスではないとよく言われるように今回も当然その議論になりました。

 

きし「イップスとは、ですね。程度の差がありますが、何かの原因があり自分の思い描く動作ができずプレーに支障があること。たしかに、意識のしすぎは誰でも起こりえます。 このゲシュタルト崩壊的なものもそうでしょう。 そもそもゲシュタルト崩壊も時間をおけば勝手に治ります。 ただ、多くの人がなる中で病的な域達してしまう方もいらっしゃいます。 その方はイップスと呼んで良いと思っています。 もちろん他者に押し付ける理論ではありません。 1つの指標であり、問題は本人がどう捉えるかです。」

 

ここに至り、イップスとはという定義を明確に作る必要を感じたわけです。

そして、原因は同じでも際限なく悪化してしまい病気とよべる段階に至る人もいるという事実が認識されにくいとも強く感じました。

例えば、不安は誰しもが感じますがそこからうつ病を発症する人もいる。というような解釈です。

 

話が飛びますが、最後の議題。

 

イップス理論について

 

たーなーさん「何にしても私は専門家ではないので正誤は判断できませんが、1,2,3,4といったように完璧に分類できるようなものでないことはわかっているつもりです。 そうであればもっとわかりやすい理論として普及しているはずですから....」

 

たしかに、現在イップス理論は十分なものが存在していません。それは、分類が不可能だからでしょうか?

 

きし「イップスを完璧に分類は難しいと思います。 しかし、症例を集めるに原因改善策を考えていくつかの主要なものとして分類は可能です。特に原因と改善策が一致せず悪化する方の話を聞いて、1つの指標を公開する大切さは感じました。 また、理論の普及ですが これはダーツがある程度マイナーな競技ということも関係していると思います。医学論文をよく読むのですが、ゴルフのイップスなんかは〇〇型イップスのように具体的に分類した論文も発表されています。 しかしダーツに関して触れているものはほとんど見かけません。 ある意味、多くの症例を集め分析分類し指標を作ることは先駆けなのかもしれません 現在理論として普及していないから、ないとは言いきれないです。もちろん生半可なものを公開したところで、逆に多くの人に混乱をもたらすと思います。 なのでできる限り慎重に作成しなければなと考えている次第です。」

 

まあ、そもそも理論化できると思ったから始めたわけなので、私はそうであると信じています


これらの意見にたーなーさんは理解を示してくださり、今回のようなイップス議論をまとめることも許してくれました。

私自身、非常に考えの進む話し合いでした。

小難しい話かもしれませんが、参考になるという方が一人でもいればと思い文字にしてみました。